弁証法と唯物史観

マルクスのイデオロギー論によれば、およそ精神的活動は、政治であれ宗教であれ科学的理論であれ、経済的土台(下部構造)に深く影響される。であるならば、ヘーゲル弁証法の原理もまた、当時の歴史段階の経済的関係を一定の仕方で反映している筈であり、マルクス的にはそれが階級間の矛盾対立となるだろう。社会が矛盾を原理としていることを論理学に適用すると、弁証法論理になる、という訳だ。だが、マルクスはヘーゲル弁証法を転倒したが、弁証法を捨て去った訳ではない。矛盾対立において支配側ではなく、被抑圧側に立って弁証法を活用した、というべきだ。