存在と無と

  存在する、とは、まず第一に、無であることでなければならない。それは弁証法的な意味でもそうだが、まず第一に無であることとは、万象にとって存在の第一条件なのである。言い換えれば、無であることができるという可能性があって初めて、物象は存在できる。それが、一般に存在本質である。ただしこれは、単なるニヒリズムではない。そのような先行する無とは、単なる否定でも空虚でもなく、可能性そのものであるような否定であり、最も充満したものとしての空虚であって、この始原の無は、超越的な絶対者のロゴスであるから。