矛盾の論理。A=A、同一律における矛盾が弁証法論理の根拠の代表的なものとして挙げられる。同一律の矛盾とは、「同一である」という事実の矛盾である。何かがー何かとー同じである、というためには、比較対象の後者が必ず必要であるが、同一であることのうちには、同じものが他には存在しない、という規定が含まれている。ある一者が唯一単独であることは、それが何かと同じ、ということがあり得ないことを意味する。ということはその一者は、それ自身、自己同一であり得ない。それ自身が一者でありながら異なるものであるという矛盾をなしている。従って、AはAではない、という事と、Aであることが同時に成り立ち、また、成り立たないのである。だが、同時に正であり誤である、とは、何を意味するのか。それは認識論から存在論への根拠の移行である。無は存在するか、という問題である。一元論である弁証法は、無が存在するという立場である。あるいは、無と有を貫いて存在の原理、絶対者の意志が貫徹しているのが弁証法的原理である。